新しい順に、ratsuki watanabeが観たものだけ並べてあります。
◆火曜ミステリーシアター「誰?」 リーフレット 2004.8.19
劇場・料金
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THEATER & COMPANY COREDO(乃木坂駅一番出口前)
3000円・ワンドリンク付き
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作・演出
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原作・演出:高谷信之
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主な出演者
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山口眞司 彩貴恵 瓜竜健司 永島広美 中谷守男
(月代わりキャスト)
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舞台の感想
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広尾から移転して、いつもはバーで、火曜日だけ演劇をやっているそうです。店の中央に机といすを置き、それが舞台。広尾の店のときよりは、広々しています。
通常の舞台よりも客席に近い分、観客の視界が狭くなり、芝居全体をみることができない。観客としてどうみればよいのか、例えば、1人の俳優だけをみていればよいのか、台詞をいう俳優の方を逐次首を振ってみていけばよいのか、迷う。
テーマとして、援助交際、医療ミス、被害者への援助不足、姉弟愛の問題などを重層的に取り上げていくのだけれど、本当に言いたい隠されたテーマが私には分らなかった。
中年の男性と若い女性という関係は、現実的すぎてエロスというよりお金を媒介とした経済関係(援助交際のような)が強く印象に残った。これなら、中年の女性と若い男性か、中年の男性と若い男性の組み合わせの方がよかったと思う。 |
山口眞司の役どころ
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中年男性の医者。若い女性との関係にしても、医療ミスへの対処にしても中途半端な感じの人で、個性のはっきりしない人。相手役の俳優のアクションを受けて演技する役回りを要求される。
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その他
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新劇っぽい表情のリアクションなどは余計だと柴田博樹さんがいっていたが、小さい舞台では特にそうだと思った。
お店は、芝居が終るとそのまま飲めます。私事になりますが、芝居の後、淳さんの大台越え(でも10歳は確実に若くみえる)のお祝いに、柴田さんがディズニーで仕込んだ風船で腕輪を作る技を披露していた。
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◆メリーさんの羊(再演) リーフレット 2002.11.10
劇場・料金 |
ステージ円 銀座線田原町駅前近く 3000円 |
作・演出 |
原作:別役実 演出: |
主な出演者 |
三谷昇、山口眞司、井出みな子 |
あらすじ
(パンフより) |
模型の汽車とたわむれながら老人が語る、メリーさんとひとり息子のトム坊やの物語。小さな机の上に立ち現れる風景は夢か現実か。人生の黄昏にさしかかった孤独な男が自らの人生を振り返り、生きていることの意味を問う。 |
舞台の感想 |
主要テーマは、鉄道事故が意図された犯罪でないことを論理的に証明できない不条理だったはず。鉄道員には鉄道事故を起こそうなんて考えもしない。だが、状況としては犯罪の動機はあるし、アリバイは証明できない。トム坊やにどう説明すれば理解してもらえるのか。
しかし、メリーの「ありがとう」という伝言でテーマがぼやけた。メリーは夫をかつての恋人である鉄道員に殺させて、しかも巻き添えに多数の乗客が死んでいるのに「ありがとう」と言うのはリアリティに欠ける。これで、「不気味なほどあっけらかんとした魔性の女」に翻弄された男の不幸が、テーマになってしまった。 |
山口眞司の役どころ |
退屈なシーンが続く中、三谷さんとともに苦労していることが分かる。 |
その他 |
脚本が今一歩足りないのでと思う。メリーは普通の女であるべき。伝言は「ありがとう」ではなく「あなた(鉄道員)を苦しめてごめんなさい」にすべき。また、前半のたばこに関わる言葉のやり取りがテーマにからんでこないので、時間つぶしのような感じ。
舞台写真(初演)あり |
◆栗原課長の秘密基地 リーフレット 2002.4.27
劇場・料金 |
ステージ円 銀座線田原町駅前近く 3500円 |
作・演出 |
原作:土屋理敬 演出:松井範雄 |
主な出演者 |
上杉陽一 福井裕子 込山順子 佐々木睦 藤貴子 入江純 他 |
あらすじ |
ある出版社の主催する児童文学賞の受賞会場での出来事。受賞者にはそれぞれの人生があり、次々にスキャンダルが発覚。対応に追われる出版社の栗原課長は、賞の体裁を保つために、場当たり的で事なかれ主義的な対応を繰り返す。 |
舞台の感想 |
栗原課長の無能ぶりは、外務省や雪印の幹部を連想させる。日本の組織や権威がいかに形式的であり、体面を取り繕うために愚かなことを行うことを「授賞式」という装置を使って示した。この視点は斬新で、作者のセンスを感じる。さらに役者の演技の確かさもあって、大人が十分に楽しめる仕上がりだ。 |
山口眞司の役どころ |
受賞作の選考委員の児童文学作家。業界の常識を示しながら、ストーリー展開を進めていく役どころで、安定感のある演技。 |
その他 |
難をいうと、栗原課長がかつて有能な編集長だったという設定は無理がある。たとえば有能な編集者なら、AV女優の書いた童話は児童文学ではなく小説で出版し、第2の山田詠美か飯島愛を目論むだろう。また彼自身が唯一感動したことがある老作家の童話を、このさい再出版しようという意欲も発想も持たないのはどうしたことか。
他の登場人物の個性がみな魅力的なだけに、主役である栗原課長のキャラクター設定の失敗がよけいに目立つ。主役が主役に見えないのである。そのためかラストが安物の青春ドラマをみる思いであり、ここでも栗原課長は学生気分の抜けない凡庸な人物にしかみえない。惜しい。
またタイトルの「栗原課長の秘密基地」にも魅力が感じられず残念。この作者は毎回人物名を入れたつまらないタイトルを付けているようだが、多くの人たちに劇場へ足を運んでもらうためにもタイトルのセンスを磨くべきだ。有能な編集者と付き合い、助言をもらえばよいのだが・・・。
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◆ふりだした雪 リーフレット 2001.3.17
劇場・料金 |
六行会ホール 京急線新馬場駅前 3600円 |
作・演出 |
原作:久保田万太郎 演出:大間知靖子 |
主な出演者 |
磯西真喜 伊和井康介 本山可久子 中平良夫 蔵一彦 藤貴子 他 |
あらすじ |
昭和の始め、下町深川で小さな荒物屋を営む叔父夫婦と暮らす、おとなしい姪のおすみは出戻りだった。ある雪の降る日、不眠症ぎみになっていた彼女のもとに復縁を願う前夫が現れ、その一方では新たな縁談が持ち上がっていた。 |
舞台の感想 |
今では文学史の中でしか知られていない久保田万太郎の脚本を掘り起こし、ベテランの俳優が仕立て上げた、大人の観客のための渋い作品。若者や子どもには受けないかもしれないが、そういうものがあっていい。
演出としては、幕を下ろし照明で雪を表出したなかを登場人物が移動するさまを見せつつ、幕裏で舞台替えをすすめるなど、工夫した手法も取り入れている。ベテラン揃いの俳優陣は安心して観ていられるし、ヒロインおすみのはかなさやそれと対照的な若い芸者の女優も、ともに日本的な美人でよかった。そば屋の少しとぼけた娘役もうまい。
あえて難を言えば、昭和初期の時代背景からセリフの意味を調べて説明を加えて欲しかった。私たちには「おすみが自動車で永代橋を渡っていった」という終幕の真意は謎であるが(それで脚本としては十分だとは思うが)、当時の下町の人なら意味が分かったかもしれないからだ。またおすみのように離婚した女性の身の振り方は、一般的にどうしたのか。女性演出家でもあることだし、その点を追求しても良かったのでは。
ただ時代背景は違っても、おすみの孤独が決して過去のものとは言えないところに、この作品の価値がある。 |
山口眞司の役どころ |
おすみの前夫の役、準主役で舞台回しもつとめる。離縁した後もおすみのことを思い続け、好きな酒もばくちもやめ、復縁を願う。ストーカーではないが、短気のようで、おすみと結婚したいきさつや、なぜ結婚後もばくちを止めなかったのか、なぜおすみと一緒に借金取りから逃げなかったのかなども説明されない。
こんなつかみ所のないキャラクターを、まずは無難にこなす。 |
その他 |
昭和初期の下町は、関東大震災の傷跡も癒えぬままに昭和恐慌をむかえ、閉塞感で沈んでいたことだろう。仮におすみが元気を取り戻し、深川で所帯をもったとしても、10数年後には東京大空襲を経験することになる。決してハッピーエンドでは終わらない時代だった。
平成不況に生きる私たちは、阪神大震災などを経験し、さらに神奈川西部地震や東海地震が迫る。景気にも地震にも周期性があることを、そして昭和初期と平成初期との類似性を、今さらながら思う。 |
◆光る時間(とき) (再演) 2000.9.19
劇場・料金 |
かめありリリオホール 亀有駅前 3500円 |
作・演出 |
原作:渡辺えり子 演出:岸田良二 |
主な出演者 |
三谷昇、柳川慶子、平野稔、野村昇史 他 |
あらすじ |
(初演1997.11.7を参照) |
舞台の感想 |
初演時の硬質な感じが薄れ、笑える場面が増えるなど演出に工夫の跡がみられた。その反面、例えば父母の結婚のエピソードを端折ったため夫婦の心の交流が未消化に終わるなど、いくつか欠点もあったと思う。
また後半になって、焦り気味なのか父役のせりふ回しが一本調子になり、全体のトーンを平板にしたのが惜しい。 |
山口眞司の役どころ |
後半の父と2人で語り合うシーンでは、息が合わず妙にぎこちない感じになった。初演ではうまくいっていたのに残念。 |
その他 |
池田晴哉にもう一度観ようと誘われたのだが、2度観る価値は確かにある。初演とは演出を変えている点も興味深かった。
詳細はこちら |
◆ハムレットの楽屋 リーフレット 2000.5.26
劇場・料金
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俳優座劇場 六本木駅より徒歩 5000円
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作・演出
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原作:ロレー・ベロン 演出:大間知靖子
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主な出演者
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平木久子、三谷昇、藤田宗久 他
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あらすじ
(パンフより)
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舞台は「ハムレット」を上演している劇場の楽屋。初日の幕開き直前におこる様々な出来事、もめ事、高まる緊張と興奮・・・そして芝居は必ず終わる・・・
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舞台の感想
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舞台楽屋劇というジャンル。劇中劇ハムレットの進行や演出家からの連絡などは、楽屋のスピーカーを通し音声(録音)で表現。この声だけの出演だが、橋爪功と渡辺謙はさすがにうまい。
ただしハムレットを読んでいないので、楽屋での俳優の処遇などと劇中劇の配役との関係がわからず。知的教養が必要な演劇。
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山口眞司の役どころ
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俳優セルジュ役で、劇中劇では王妃とフォーティンプラスの2役をやる(声のみ)。役作りに安定感がでてきた。三谷昇さんとの掛け合いなど安心して観ていられる。
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その他
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開演前の劇場近くで池田晴哉と偶然会って、まだ時間があるからと喫茶店でビールを付き合ってしまい、ほろ酔い気分で観てしまった。
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◆メリーさんの羊 リーフレット 2000.2.9
劇場・料金
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渋谷ジャンジャン 渋谷公園通り 3000円
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作・演出
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原作:別役実 演出:岸田良二
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主な出演者
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三谷昇、山口眞司、井出みな子
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あらすじ
(パンフより)
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模型の汽車とたわむれながら、老人が語るメリーさんとひとり息子のトム坊やの物語。不安をはらみながら意外な展開を見せていく話は、果たして男の妄想なのか。
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舞台の感想
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実質的に三谷昇と山口の2人芝居。脚本の稚拙さを俳優の力量でカバーしている。三谷さんの存在感のある役にも感心した。
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山口眞司の役どころ
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偏屈な老人に、正体を隠して会いにいく青年の役で、三谷の存在感をうまく受け止めた演技。ただ自らの正体を明かす前後で、ほんの少しだけ声色を変えられると、もっと深みが出せるような気がする。
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その他
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意味不明の「不条理劇」で名高い別役実脚本だが、これは素直で分かりやすい作品。こうしたまともな脚本、「不条理」に逃げ込まない作品をもっと作って欲しい。
舞台写真あり
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●過去の舞台 その1 1990年代
●過去の舞台・最新 2005年以降